戦略を立てる立場の方は是非「超限戦」の概念を理解して、現在進行中の経済戦争を勝ち抜く資としてもらいたい。また、経営者や企業幹部でなくても、ビジネスの流れ、経営の動きを俯瞰的に見る目を養うことになるので、是非当ページを最後まで読んで頂きたい。
もし、「超限戦って何?」と思った方は【戦術・作戦・戦略…ごちゃまぜになってません?軍事を学んで仕事に活かそう!】を参照し、戦略の部分とハイブリッド戦の部分を特に読んで貰いたい。
はじめに
超限戦、もしくはハイブリッド戦はあらゆる領域(ドメイン)の壁を取り払った戦いだ。次世代の戦争を定義する上で、今のところもっとも理論立った考え方であり、既に発刊20年を経てなお色あせない。次世代の戦争にどのように勝つか。まず超限戦の原理を理解することが大切だ。
結論
超限戦、ハイブリッド戦を定義する原則については以下の8つ。
- 全方向度
全方向度へ視線を向け対応しろ。 - リアルタイム性
ITを駆使しリアルタイムで戦況を掌握しろ。 - 有限の目標
目標を通り過ぎるな。深追いする必要はない。 - 無限の手段
手段は目標奪取するためのコスパを考えて選べ。 - 非均衡
自分(自国)の得意なフィールドで戦え。 - 最小の消耗
コスパ重視 - 多次元の協力
色んな分野、色んな立場の人に協力してもらえ - 全過程のコントロール
戦略をコントロールする力を持て。勝つにしても負けるにしても重要。

本論
超限戦・ハイブリッド戦は以前の戦争と比較し、差異をつける上で決まり事、原則がある。それが結論で挙げた8つだ。
全方向度
従来の戦争は軍事力対軍事力の決戦であり、一方向を警戒していればよかった。しかし、現代戦は軍事はもちろん、政治や経済、情報、果てはエンタメといった分野にまで警戒が必要になってくる。そういう意味で際限なく全方向に警戒が必要になってきたと言える。
また、各分野がペネトレイトしてくる速度や強度もまちまち。思想分野においてはいつの間にかエンタメという手段を用いて敵国民をコントロールしているという状態も起こりうる。
こういった時代には相関図というものを利用するといい。世界もしくは業界でのポジションを俯瞰視できる。

リアルタイム性
IT(情報技術)が進歩した現代においてリアルタイムで戦況(状況)を把握できるということは重要だ。人が実際にディスプレイに張り付いていなくとも、何らかの条件でアラートをかけることによって行動基準を知ることができる。機を逃さずに行動できる。
超限戦はあらゆる分野の局面が同時並行的に進ちょくしている。進ちょく状況をリアルタイムで知るには、進ちょくチャートを作ると見やすい。

有限の目標
目標ができたから手段を整えるのか?
違う。それでは遅すぎる。目標はいつまでもそのポジションに留まってはいないし、外部条件も様々に変化していくだろう。やれるからやるのだ。超限戦は細かい目標を可能な限り短時間でゲットし続けるレースだ。まず目標を獲れるか獲れないか、今準備できる手段を考察せよ。
その意味で目標は有限であることを知れ!

無限の手段
目標が有限であることに対し、手段は無限だ。軍事~エンタメまで様々な分野から、個人~組織、オフィシャルだろうがノンオフィシャルだろうが領域を超えて手段を構成しろ。
逆に目標に対して手段を限定すると敵に読まれやすくなる。そして、コストは増大する。
超限戦においては際限なく手段を見つけて作るということが大切だ。ビジネスにおいても全く異なる分野の手段、資源を用いた方がコスト的にもプロセス的に有利になることがある。とにかく、手段に関しては固定概念を捨てろ。

非均衡
均衡する相手と戦うのは消耗戦になる可能性がある。メリットなし。
だが、超限戦時代においては総力において弱小チーム対強大チームが頻繁に生起する。なぜならば、非均衡という超限戦の原則が働くからだ。つまり、ゲリラ戦や宗教戦争、サイバー戦争など様々なフィールドが用意されているからだ。
自分から非均衡を探してそのフィールドで挑め。これは卑怯でも何でもない。攻めやすいから攻めるのみだ。一部のテロ国家や集団は非対称戦(大国対小国のような戦い)を取らざるを得ない状況に陥っている。ならば、非均衡部分を積極的に探してそこを攻めるのが定石となる。

最小の消耗
「コスパ」が叫ばれる時代。流行語かと思われるくらい使われている。それは戦争でも同じ。最小限の消耗で最大限の効果をゲットだ。資源は限られている。とにかくコスパを高めるには次の3つが大切。
- 合理化を徹底しろ
もっと言えば固定費削減だ。ただの節約より複利的に効果が発揮される。 - 作戦で戦闘ドクトリンを指導しろ
戦闘ドクトリンとは何をメインに使って勝つか?のところ。木製の掘っ立て小屋をトマホークでぶっ潰すのはタダの浪費だ。 - 手段を相乗させろ
防御に堀が必要なら作ればいい。そして、そこを物流にも使うと言い。

多次元の協力
色んな分野、色んな立場の人に協力してもらえ。超限戦は際限なき領域での戦い。多くの協力者が必要になる。協力者を増やす際に次の事に注意、配慮しろ。
- 歴史的地位
- 文化的伝統
- 民族的アイデンティティー
協力者は非軍事分野(自分とは違った分野)の者が多くなるだろう。背景を考慮し、支持を取り付けろ。

過程のコントロール
コストを見越し、戦略をコントロールする力を持て。勝つにしても負けるにしても重要。戦略上どうしてもロスカット(後退・敗北)を受け入れなければならない局面も出てくるだろう。あくまで大局を見てコストを計れ。
過程をコントロールできなければ、勝利や敗北どちらにも向かわない事態になるだろう。それは無意味な消耗であって、タダの浪費だ。コントロールしづらくなってきたら戦略と向き合え。そして、いくらか作戦を変更せよ。

さいごに
際限なく、分野隔たりなく、時空的無制限に、など自由な感じで定義される超限戦。未来の戦争は、手段が大衆化してしまう場合もあり、開戦時も曖昧になる。いつの間にか戦争に加担している、もしくは支持している状態になるかもしれない。ビジネスにおいてはもうそのような時代が来ている。もはや我々は巨大コングロマリット、情報企業がなくてはならない存在になっており、それらが提供する商品・サービスはコモディティ化しつつある。それにも関わらず、我々はいつまでも付加価値と呼ばれるものに金をつぎ込んでいる。
ビジネスの世界では既に超限戦はスタートしており、巨大企業は無限の手段を用い、非均衡部分を苛烈に攻め続けている。戦争に興味があろうがなかろうが、現実に世界は軍事学・戦争を知る者が現実を変更し続ける。
当ページの超限戦情報が読者・経営者・ビジネスマンたちの戦略を立てる上での資となれば幸いです。

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