経済/外交/軍事においてジェンダーギャップ改善は非常に有効です。それは国家レベルのソリューションではなく、企業レベルや個人レベルでも取り組めるものです。
未来の日本の国力は成長産業の取捨選択によって決まっていくでしょう。宇宙、ブロックチェーン、AIは日本にとって絶対的な優勢分野となる可能性があります。そして、フルコミットするにはジェンダーギャップ改善が必要です。
ジェンダーギャップ指数
ジェンダーギャップ指数は、世界経済フォーラムが発表する国ごとの男女格差の評価です。経済参加、教育達成度、健康寿命、政治エンパワーメントの4領域で評価し、各国の進捗と改善を追跡します。
ジェンダーギャップ指数統計元
ジェンダーギャップ指数は、世界経済フォーラム(World Economic Forum, WEF)によって年次的に発表されます。WEFは非営利の国際組織で、公共とプライベートのステークホルダーがグローバルな問題について議論し、それらを解決するためのプラットフォームを提供しています。
ジェンダーギャップ指数の目的
ジェンダーギャップ指数の目的は、国ごとのジェンダー格差を可視化し、比較することです。具体的には、経済的な参加と機会、教育的な達成度、健康と生存、政治的なエンパワーメントの4つの分野における男女の間の格差を評価します。これにより、各国がジェンダー平等の進捗を追跡し、改善策を検討するためのツールを提供します。
ジェンダーギャップ指数の影響
ジェンダーギャップ指数は、男女平等の推進に対する国際的な認識を高める役割を果たしています。この指数は、各国が自国のジェンダー格差の現状を理解し、その改善に向けた施策を立案するための重要な指標となっています。
企業/経営者に対する影響
さらに、企業や政策立案者にとって、ジェンダーギャップ指数は男女平等の重要性を認識し、その改善に向けたアクションを取るための動機づけにもなっています。たとえば、女性の労働力参加を増やす、賃金格差を縮小する、女性の教育機会を増やす、女性の健康と福祉を向上させる、女性の政治参加を促進するなどの施策が考えられます。
市民への影響
また、この指数は一般市民にも影響を与えます。ジェンダーギャップ指数を通じて、市民は自国や他国のジェンダー格差の現状を理解し、それに対する意識や行動を変えるきっかけにすることができます。
ジェンダーギャップ指数の項目
ジェンダーギャップ指数は、それぞれ0(完全な不平等)から1(完全な平等)の間で評価され、全体的なジェンダーギャップ指数はこれらの平均として計算されます。
各項目を詳しく見ていきましょう。
経済指数
女性が経済的にどれだけ活動しているか、そしてどれだけの機会が女性に与えられているかを評価します。具体的には、女性の労働参加率、賃金格差(同じ仕事をしている男性と女性の間の平均的な賃金の差)、そして女性が上級管理職や役員としてどれだけ活動しているか(女性のリーダーシップポジションの割合)を見ます。
政治指数
女性が政治的な決定を行うポジションにどれだけ存在しているかを評価します。具体的には、女性が国家元首や議員、閣僚のポジションにどれだけ就いているか(女性の政治的な代表性)を見ます。
教育指数
男女間での教育の達成度の差を評価します。基本的な教育の達成度(例えば、初等教育と中等教育の完了率)と高等教育の達成度(大学等の高等教育機関の卒業率)を見ます。
健康指数
男女間の健康格差を評価します。具体的には、健康的な寿命(男性と女性が健康な状態で生きることができる平均的な年数)と出産に関連するリスク(母親の健康リスクや子供の健康状態)を見ます。
日本のジェンダーギャップ指数の特徴
参照:内閣男女共同参画局(https://www.gender.go.jp/index.html)
日本のジェンダーギャップは教育分野で世界1位の評価を受けています。健康も完璧な評価です。
一方で、政治や経済分野で女性の不利な状況は続いています。どういうことでしょうか?
ジェンダーギャップ低評価項目の理由
- 女性の管理職比率が低い
- 女性の賃金水準が低い
- 女性の政治家比率が低い
日本のジェンダーギャップ指数は、経済分野と政治分野で低い評価となっています。その理由は、いくつか考えられます。
女性の管理職比率が低い
日本の女性管理職比率は、2022年時点で14.9%と、OECD加盟国平均の29.1%を大きく下回っています。これは、女性が管理職に登用される機会が少ないことを意味しています。
女性の賃金水準が低い
日本の女性の賃金水準は、男性の賃金水準の7割程度にとどまっています。これは、女性が男性と同じ仕事量をこなしていても、男性よりも賃金が低いことを意味しています。
女性の政治家比率が低い
日本の国会議員における女性の比率は、2022年時点で10.2%と、OECD加盟国平均の25.8%を大きく下回っています。これは、女性が政治に参加する機会が少ないことを意味しています。
これらの理由から、日本のジェンダーギャップ指数は、経済分野と政治分野で低い評価となっています。日本政府は、これらの課題を解決するために、女性の管理職登用や女性の賃金水準の向上、女性の政治参加の促進などの政策を実施しています。
ジェンダーギャップ指数改善が日本政府に果たす役割
ジェンダーギャップ指数改善はいくつかのメリットを日本政府、日本社会にもたらします。
経済成長
女性が経済活動により活発に参加することで、労働力が増え、経済の生産性と成長が促進される可能性があります。また、多様な視点が経済活動に組み込まれることで、創造性やイノベーションが増すことも期待できます。
社会的公正
ジェンダーギャップの縮小は、男女平等という社会的公正の視点からも重要です。すべての個人が能力に応じて貢献し、報酬を受け取ることができる社会は、公正で平等な社会を目指す基本的な価値に対する支持を表します。
人口問題への対策
日本は急速な人口減少と高齢化に直面しています。これらの問題に対処するためには、女性の経済参加を促進し、女性がキャリアと家庭生活を両立できる社会を作ることが重要です。
国際的評価
ジェンダーギャップ指数の改善は、日本の国際的な評価を向上させる可能性があります。男女平等は国際社会で普遍的に求められており、その進捗は国際社会からの評価や信頼に直結します。
性別ステレオタイプの打破
性別に対する固定的なイメージやステレオタイプは、ジェンダーギャップの原因となり得ます。教育やメディアを通じて性別ステレオタイプを打破し、女性も男性も自由に選択できる社会を目指すことが重要です。
ジェンダーギャップ指数改善が企業に果たす役割
ジェンダーギャップ指数の改善は、企業の生産性、イノベーション、ブランドイメージ、人材確保、資金調達など、さまざまな面でポジティブな影響を与えます。
労働力の拡大と生産性向上
男女平等の推進は、労働市場の労働力を増やす可能性があります。これにより、企業はより広範なスキルと経験を持つ労働者にアクセスでき、生産性を向上させることが可能になります。
イノベーションと創造性の促進
多様な視点と経験を持つチームは、新しいアイデアや解決策を生み出す可能性が高くなります。このため、男女平等を推進することは、企業のイノベーションと創造性を促進します。
ブランドイメージと評判の向上
社会的責任を果たす企業としてのイメージは、顧客や投資家からの評価を高めます。ジェンダー平等を推進する企業は、これらのステークホルダーからの信頼を得られ、その結果、ブランドイメージと評判を向上させる可能性があります。
雇用者としての魅力向上
多様性と包摂性を重視する企業は、優秀な労働者を引きつけやすくなります。ジェンダー平等を推進することで、企業は雇用者としての魅力を向上させ、優秀な人材を確保しやすくなります。
投資家からの資金調達
多くの投資家は、ジェンダー平等や持続可能性を重視しています。ジェンダーギャップ指数が改善されると、これらの投資家からの資金調達が容易になる可能性があります。
政治と社会のジェンダーギャップ指数改善ステップ
ジェンダーギャップ指数の改善には、政策の制定、教育の改革、そして社会全体の意識改革が必要です。以下に、政治と社会における改善のための具体的なステップを考察します。
法的枠組みの改革
法律は社会の行動と態度を形成する強力な手段です。男女平等を保証する法律を制定し、既存の性差別的な法律を改正することが重要です。
教育の改革
教育は個々の意識と行動を形成する基盤です。学校教育におけるジェンダー平等の教育、そして女性のリーダーシップやSTEM(科学、技術、工学、数学)分野への参加を奨励するためのプログラムが必要です。
女性の政治参加の促進
政治的な意思決定に女性が参加することは、ジェンダーギャップの縮小に大いに貢献します。女性の政治参加を促進するためには、女性候補者の育成や選挙制度の改革(例えば、クォータ制度の導入)などの施策が考えられます。
社会保障制度の強化
育児や介護の負担は、女性の経済参加や政治参加の障壁となることがあります。これらの負担を軽減するために、育児休暇や介護休暇の制度を強化し、公共の保育施設や介護施設を増やすことが重要です。
社会全体の意識改革
男女平等の価値を広く認識し、尊重する社会的な意識改革が必要です。メディア、教育、企業、そして政府が一体となって、ジェンダー平等のメッセージを発信し、性別ステレオタイプや偏見を打破する活動を推進することが重要です。
企業のジェンダーギャップ指数改善ステップ
企業におけるジェンダーギャップ指数の改善には、具体的なステップと実践的な戦略が必要です。以下に、その具体的なステップを考察します。
明確なポリシーの設定
ジェンダー平等に関する明確な企業ポリシーを設定し、これを全社員に伝えることが重要です。これには、ハラスメント防止ポリシーやダイバーシティとインクルージョンのポリシーが含まれます。
リクルートメントとプロモーション
採用と昇進のプロセスにおいて、男女平等を重視することが必要です。これには、公平な採用基準の設定、無意識の偏見を排除するためのトレーニング、そして女性のリーダーシップの育成と昇進の機会の提供が含まれます。
メンターシップとスポンサーシッププログラム
経験豊富な社員が若手や女性社員のキャリア発展を支援するメンターシップやスポンサーシッププログラムを設けることが有効です。
ワークライフバランスの推進
フレキシブルな勤務時間、リモートワークの導入、育児や介護のための休暇制度の整備など、ワークライフバランスを支援する政策を導入することが重要です。これにより、女性だけでなく男性も家庭と仕事を両立できる環境を提供します。
ジェンダーバランスの達成
経営層やボードメンバーのレベルでジェンダーバランスを達成することが重要です。これにより、企業全体の意思決定における女性の視点と声を確保します。
定期的な評価と反省
ジェンダーギャップの状況を定期的に評価し、必要な改善策を反省と共に立案することが必要です。
ジェンダーギャップ指数改善に取り組む自治体や企業の紹介
ジェンダーギャップ指数改善に取り組む自治体
北海道芽室町
父親の子育てと地域活動を支援する「パパ・スイッチ事業」を推進。
青森県
「パパがつくる基本のクッキング&家族にモテるパパになる秘訣」プログラムを開催し、父親が家族との関係を深めるための料理スキルを教えています。
秋田県大仙市
「パパパワーUP講座」を開催し、地域での子育て支援、仲間づくり、趣味・技能の開発を推進。
栃木県
男性向けの料理教室「気分は料理の鉄人!」を開催。
千葉県千葉市
「育男手帳(イクメンハンドブック)」を提供し、子育て支援と女性視点の参照を推進。
東京都武蔵村山市
「ムラパパマイスター養成講座」を開催し、父親の子育てと地域参画を支援。
神奈川県川崎市
「イクメン研究所」を設立し、男性の子育て、家事、地域参画、連携を支援。
新潟県新潟市
「男性の生き方講座(定年期向け)」を開催し、男性の生き方、仲間づくり、グループ支援を推進。
福井県
「クイズ感覚で家事の知識を学ぶ」プログラムを開催し、男女の家事参加を推進。
静岡県
「オトコのしゃべり場 心和みカフェ」を開催し、男性の意識、悩み、語り合いを支援。
三重県
「フレンテみえ」は男性を対象とした取組を行い、男性の家事・地域参画、交流、男性相談を推進。
愛知県
「男性にとっての参画プロジェクト」を推進し、啓発用DVDを提供し、多様な団体との「協働」を推進しています。
滋賀県
「ファミリースマイルUP!」プログラムを推進し、ワーク・ライフ・バランス、イクメン、カジダン、ケアメン、イクメンを支援。
京都府京都市
「地域デビュー講座」を開催し、地域活動、社会貢献、ノウハウ伝授、広範な連携を推進。
大阪府大阪市
「クレオ大阪の取組み」を推進し、家庭生活・地域活動への参画、男性相談、交流を支援。
兵庫県姫路市
「男のセルフマネジメント講座」を開催し、自分らしい生き方、ワーク・ライフ・バランス、男性相談を推進。
広島県広島市
「プラチナ塾&イクメン・カジダン養成講座」を開催し、男性の家庭生活・地域活動等への参画、世代別、NPOとの協働を推進。
熊本県天草市
「男磨き、そして絆づくり」を推進し、男性にとっての男女共同参画、市民団体との協働、ファッションショー、夫婦円満、高齢化社会、介護を支援。
大分県
「目指せ!家事男(カジダン)・イクメン」プログラムを推進し、男性の家事・育児参加、大学生との連携、子どもへの意識啓発を推進
ジェンダーギャップ指数改善に取り組む企業
ソニーグループ株式会社
ソニーグループ株式会社は、2022年の世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で、日本企業で第1位、世界で第8位となりました。ソニーグループは、女性の管理職比率を2030年までに30%にするという目標を掲げ、女性の活躍推進に向けた様々な取り組みを行っています。具体的には、女性の管理職登用を促進するための研修プログラムの提供や、女性のネットワークづくりなどのサポートを行っています。
株式会社リクルートホールディングス
株式会社リクルートホールディングスは、2022年の世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で、日本企業で第2位、世界で第11位となりました。リクルートホールディングスは、女性の活躍推進を経営戦略の重要課題の一つと位置づけ、女性の管理職比率を2030年までに40%にするという目標を掲げています。具体的には、女性の管理職登用を促進するための研修プログラムの提供や、女性のネットワークづくりなどのサポートを行っています。
株式会社パナソニック
株式会社パナソニックは、2022年の世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で、日本企業で第3位、世界で第15位となりました。パナソニックは、女性の活躍推進を経営戦略の重要課題の一つと位置づけ、女性の管理職比率を2030年までに30%にするという目標を掲げています。具体的には、女性の管理職登用を促進するための研修プログラムの提供や、女性のネットワークづくりなどのサポートを行っています。
まとめ
ジェンダーギャップ指数は、世界各国の男女間の不均衡を示す指標です。日本は、2022年のジェンダーギャップ指数で116位と、先進国の中では最低位となりました。ジェンダーギャップ指数を改善することで、多くのメリットがあります。
女性の経済的自立が進むことで、日本の経済成長につながります。女性は男性よりも消費性向が高いため、女性の経済活動が活発になると、消費が拡大し、経済成長につながります。
また、ジェンダーギャップ指数の改善は、女性の政治参加の促進にもつながります。女性の政治参加が進むことで、女性の視点が政治に反映され、より良い政策が実現されます。
さらに、ジェンダーギャップ指数の改善は、男女間の賃金格差やハラスメントの解消にもつながります。男女間の賃金格差やハラスメントが解消されることで、女性がより安心して働ける環境が整い、女性の社会進出が促進されます。
経営改善、社会システム改善の方向性としてジェンダーギャップ指数への関心は重要です。経営者の皆様、為政者の皆様、経済/軍事/外交にジェンダーギャップ指数改善をもって望んでみてはいかがでしょうか。