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100万人に見られる記事より、契約したい10社に読まれる記事の方が価値を持つことがあります。
BtoBマーケティングでは、アクセスを最大化することだけが正解ではありません。取引額が大きく、営業期間も長い商材なら、「どの企業に売りたいか」を先に決め、その企業に必要なコンテンツを逆算するという戦い方があります。それがABM(Account-Based Marketing)です。
一般的なコンテンツマーケティングでは、「経費精算 SaaS」「生成AI 導入」といった検索キーワードから記事を作り、多くの見込み客へ届けます。
ABMでは順番が逆です。
まず「この企業と取引したい」というターゲットアカウントを決め、その企業が抱えていそうな課題、意思決定者、現在のシステム、事業戦略などを調べたうえで、必要なコンテンツを作ります。
SalesforceはABMについて、高価値の顧客企業に集中し、それぞれを一つの市場のように扱ってパーソナライズしたマーケティング・営業活動を行う戦略と説明しています。
ただし、本記事でいう「1社1コンテンツ」は、100社に100本を完全手作業で作るという意味ではありません。企業の重要度に応じて1社専用・業界別・共通コンテンツを使い分けることが現実的です。
- ABMでは「誰に届けるか」を記事テーマより先に決める
- すべての企業を「1社専用」にしない|ABMは3段階で分ける
- 「企業」を狙っても、実際に読むのは複数の人
- 企業研究は「公開情報」だけでもかなりできる
- 「御社向けです」と会社名を連呼するだけではパーソナライズではない
- 1社向けコンテンツは「仮説→証拠→提案」で作る
- 架空例|食品メーカーA社を狙うならどう作る?
- 「1社1記事」だけでなく1社に5つの接点を作る
- LinkedInならターゲット企業単位で広告を届けられる
- 営業メールと広告と記事を「同じ主張」に揃える
- AIは「100社分書く」より共通部品と個社差分を作るために使う
- Higgsfieldなら企業・業界ごとの動画クリエイティブを増やせる
- 役職別の短い説明動画にはElevenLabsも使える
- 「パーソナライズしすぎて気持ち悪い」を避ける
- ABMではPVではなく「企業単位」で成果を見る
- 最初のABMは「5社×3コンテンツ」程度から試す
- 狙った企業へ届けるBtoBコンテンツを設計したい企業の方へ
- ABMコンテンツでよくある質問
- まとめ|「たくさん作る」前に「誰を落としたいか」を決める
- 参考情報
ABMでは「誰に届けるか」を記事テーマより先に決める
通常のSEO記事なら、検索ボリュームや競合性からテーマを選ぶことがあります。ABMでは「この企業が顧客になったときの価値」を先に見ます。
TARGET ACCOUNT SCORE
自社サービスと課題が合うか
契約規模・継続性
商談・資料閲覧・既存関係
重要業界・事例価値
例えば大手製造業向けに強みを持つSaaS企業なら、「日本企業500万社へ広告を出す」より、導入余地が大きい製造会社50社を選び、それぞれの検討を深める方が効率的なケースがあります。
すべての企業を「1社専用」にしない|ABMは3段階で分ける
ABMではパーソナライズの深さによって、一般的にOne-to-One、One-to-Few、One-to-Manyという考え方があります。
🎯 ABM THREE TIERS
TIER 1
1 : 1
最重要企業。会社ごとに専用資料・動画・提案コンテンツを作る。
TIER 2
1 : FEW
同業界・同課題の企業をまとめ、業界特化コンテンツを作る。
TIER 3
1 : MANY
共通属性に合わせ、AIや自動化を使って広くパーソナライズする。
Salesforceも現在、ABMをOne-to-One、One-to-Few、One-to-Manyの3タイプに整理しています。
重要なのは、100社すべてへ最高コストの1:1施策を実施しないことです。契約価値が高い5社だけ1:1、次の30社は業界別、残りは共通コンテンツというように投資量を変えます。
「企業」を狙っても、実際に読むのは複数の人
ABMでよくある失敗が「部長1人を見つけて営業メールを送ればいい」と考えることです。
BtoBの購入では、現場利用者、部門長、情報システム、財務、経営層、購買担当など複数の立場が意思決定に関わります。
🏢 ONE ACCOUNT ≠ ONE PERSON
売上・投資対効果
業務改善・成果
連携・セキュリティ
価格・契約条件
同じ企業でも、経営者へはROI、IT部門へは連携仕様、現場へは使い方を見せるなど、役割ごとにコンテンツを変えます。
企業研究は「公開情報」だけでもかなりできる
個社向けコンテンツを作るからといって、個人のプライベート情報を集める必要はありません。
企業が公式に公開している事業情報だけでも、課題仮説を作る材料があります。
IR・中期計画
重点投資・経営課題
ニュースリリース
新事業・拠点・提携
採用情報
強化部門・必要スキル
サービスページ
現在の事業・顧客
ここで注意したいのは、「公開情報から確認できる事実」と「自社が推測した課題」を分けることです。
⚠️ 仮説を事実として書かない
事実:「海外拠点を3拠点新設すると発表している」
仮説:「拠点間の情報共有負担が増える可能性がある」
この2つを分ければ、相手企業について勝手な決めつけをするリスクを抑えられます。
「御社向けです」と会社名を連呼するだけではパーソナライズではない
AIを使えば、会社名を差し替えた営業資料を100社分作ることは簡単です。しかし、それでは宛名差し込みメールと大きく変わりません。
個社コンテンツで変えるべきなのは名前ではなく、課題・根拠・事例・CTAです。
名前だけ変更
「○○株式会社様へ」
本文は全社共通
事例も全社共通
文脈を変更
対象事業を反映
同業界事例を選ぶ
役職別CTAを変える
1社向けコンテンツは「仮説→証拠→提案」で作る
個社向けの記事や動画は、企業分析レポートのように長くする必要はありません。
相手企業に関係する課題仮説を一つに絞り、自社が持つ証拠と組み合わせます。
🎯 ONE ACCOUNT CONTENT
御社の○○計画なら
同業界の事例・数字
まずここだけ改善
架空例|食品メーカーA社を狙うならどう作る?
ここでは、業務管理SaaSを販売している企業が、大手食品メーカーA社をTier 1に設定したと仮定します。
🏭 TARGET ACCOUNT:食品メーカーA社(架空例)
国内工場を増設し、生産体制を強化すると発表
複数拠点間の進捗管理が複雑になる可能性
「複数工場の進捗を本部で一元管理する方法」
「3拠点→1画面で見る30秒デモ」
製造業の導入事例を見る
記事タイトルへA社名を入れなくても構いません。相手が実際に検討しそうなテーマを深く作るだけでも、十分にABMコンテンツになります。
「1社1記事」だけでなく1社に5つの接点を作る
ABMは記事を1本作ってURLを送れば終わりではありません。同じ主張を異なる形式へ展開します。
ACCOUNT CONTENT PACK
同じ調査を5回やるのではなく、1回調査した企業情報から5つの接点を作るのが効率化のポイントです。
LinkedInならターゲット企業単位で広告を届けられる
個社向けコンテンツを作っても、相手に届かなければ意味がありません。BtoBのABMで使いやすい配信手段の一つがLinkedInです。
LinkedInのCompany Targetingでは、ターゲット企業リストをアップロードし、LinkedIn Pagesと照合してABMキャンペーンを配信できます。また、役職、会社、業界、シニアリティなどのプロフェッショナル属性と組み合わせて対象を絞れます。
📡 CONTENT → TARGET ACCOUNT
LinkedInはMatched Audiencesで、企業リストによるCompany Targeting、連絡先リスト、Webサイト訪問者へのリターゲティングなどを提供しています。
営業メールと広告と記事を「同じ主張」に揃える
営業担当は「業務時間削減」を訴求しているのに、広告は「最新AI搭載」、記事は「会社紹介」では、ターゲット企業から見るとメッセージが分断されます。
ABMでは営業とマーケティングが同じアカウントを見ながら、主張を合わせることが重要です。
ONE ACCOUNT / ONE MESSAGE
「拠点管理を簡素化」
「3拠点→1画面」
複数拠点管理の方法
製造業の導入事例
AIは「100社分書く」より共通部品と個社差分を作るために使う
ABMとAIは相性が良い一方、「企業名だけ変えた記事を100本作る」という使い方では品質が下がります。
おすすめは、共通部分と個社部分を分ける方法です。
🤖 80% CORE + 20% ACCOUNT
※80/20は運用イメージです。案件の重要度に応じて個社化する割合を変えます。
例えば製造業向け記事の基本構成を作り、「対象企業の公開情報」「同社に関係する課題仮説」「最も近い事例」「CTA」だけを差し替えれば、毎回ゼロから制作する必要はありません。
Higgsfieldなら企業・業界ごとの動画クリエイティブを増やせる
Tier 1企業ごとに動画広告を制作すると、映像制作の負担が大きくなります。そこで、実績や機能など正確性が必要な素材は共通化し、冒頭や背景、モーションなどをAIで変える方法があります。
ABM向けクリエイティブのバリエーションにはHiggsfield
HiggsfieldのMarketing Studioでは、Webサイトや商品ページなどからブランド要素を取り込み、広告、UGC、Motion、ポスターなど複数形式のクリエイティブを制作できます。現在は1,500以上のテンプレートが用意されています。
例えばSaaS企業なら製品UIやロゴを共通素材として使いながら、「製造業向け」「物流向け」「金融向け」で冒頭やビジュアル表現を変えるといった運用ができます。
ただし、ターゲット企業のロゴや人物、オフィスなどを許可なく広告素材として再現するのではなく、自社ブランド側の表現を調整する用途に使うのが安全です。
Higgsfieldを確認する紹介リンク経由の割引内容・対象プランはアクセス時の表示をご確認ください。
役職別の短い説明動画にはElevenLabsも使える
同じサービスでも、経営層とIT担当者へ伝える内容は違います。映像を共通化し、ナレーションだけ役割別に変える方法もあります。
役職ごとのナレーション差分にはElevenLabs
ElevenLabsのText to Speechを使えば、確定した営業原稿から音声を作れます。例えば同じ30秒デモでも、経営者向けはROI、IT担当向けは連携・セキュリティ、現場向けは操作時間というようにナレーションを変えられます。
実在する経営者やターゲット企業担当者になりすます音声は使わず、自社側の説明ナレーションとして利用します。また、商用利用では利用プランの条件を確認してください。
ElevenLabsを確認する「パーソナライズしすぎて気持ち悪い」を避ける
ABMでは企業研究を深くするほどよいとは限りません。相手に「なぜそこまで知っているのか」と警戒されれば逆効果です。
🛡️ パーソナライズの境界線
◎ 企業公式サイトの事業方針
◎ IR・ニュースリリース
◎ 公開されている採用・製品情報
◎ 商談で企業から共有された課題
△ 担当者個人の私生活に関する情報
△ 出所が不明な個人データ
△ 公開意図のない情報を推測して訴求
「あなたのことを調べました」と見せるのではなく、「御社のような状況に役立つ情報を用意しました」と感じてもらえるレベルを目指します。
ABMではPVではなく「企業単位」で成果を見る
個社向け記事のアクセスが30PVしかなくても、その中に狙った企業の意思決定者が含まれ、商談へ進んだなら成果があります。
そのため、一般的なメディアKPIとは別の指標を置きます。
対象企業へ届いたか
複数役職へ届いたか
記事・資料を見たか
案件化したか
SalesforceやHubSpotのABM機能も、個人リードだけではなくターゲットアカウントを単位として管理・レポートする設計を持っています。
最初のABMは「5社×3コンテンツ」程度から試す
いきなり100社へ個社施策を始めると、調査・制作・営業連携が複雑になります。
最初は対象企業を5社程度に絞り、同じ制作フローで試す方法があります。
🚀 ABM PILOT / 5 ACCOUNTS
5社を選ぶ
課題仮説を作る
記事・動画・資料
営業と配信
商談まで計測
この5社で、どの調査項目が役立ったか、どのコンテンツが読まれたか、営業担当が使いやすかったかを確認してから対象企業を増やします。
狙った企業へ届けるBtoBコンテンツを設計したい企業の方へ
PVを増やすだけでなく「誰に読ませるか」から企画します
本ブログ編集部では、ターゲット業界・企業、営業資料、導入事例、競合状況などを整理し、BtoB向けSEO記事、比較コンテンツ、ホワイトペーパー、ショート動画企画へ展開しています。幅広い検索流入を狙う施策だけでなく、特定業界や顧客層へ深く刺すコンテンツ設計にも対応します。
相談のみでも歓迎です。原則24時間以内の返信を心がけています。ランサーズなどのサードパーティを介したご依頼にも対応できます。
ABMコンテンツでよくある質問
中小企業でもABMはできますか?
できます。むしろ広告予算や営業人員が限られている企業ほど、「どの企業でもよい」ではなく、受注可能性と契約価値が高い企業へ集中する考え方は使えます。大規模なABMツールを入れず、5〜10社から手作業で試す方法もあります。
企業ごとに記事を作るとSEOで重複コンテンツになりませんか?
会社名だけ差し替えた大量記事を公開する運用はおすすめしません。1:1コンテンツは限定LPや営業資料として使い、検索公開する記事は業界や課題ごとに十分な独自価値を持たせる方法があります。
ABMと通常のSEOはどちらを選べばいいですか?
どちらか一方にする必要はありません。SalesforceもABMは従来のリード獲得を置き換えるのではなく補完するものと説明しています。SEOで新規需要を獲得し、重要企業にはABMで深くアプローチする組み合わせも可能です。
AIでターゲット企業の分析まで自動化できますか?
公開情報の整理、企業間の共通点抽出、構成案作成などには使えます。ただし、企業の課題や意思決定状況をAIの推測だけで事実と決めつけないことが重要です。最終的には営業担当が持つ一次情報と照合します。
まとめ|「たくさん作る」前に「誰を落としたいか」を決める
コンテンツマーケティングでは、記事数、PV、SNS再生数を増やすことへ意識が向きがちです。しかし、高単価のBtoB商材では「誰が見たのか」の方が重要になることがあります。
狙う企業を決める → Buying Committeeを考える → 課題仮説を作る → 個社・業界コンテンツを作る → 営業と同じメッセージで届ける → Account単位で測る。
AIは、この工程を大量送信へ変えるためではなく、調査整理や共通コンテンツの再利用によって、少人数でもパーソナライズを続けるために使います。
最初の一歩は簡単です。営業担当へ「今年、絶対に取引したい企業を5社だけ挙げてください」と聞いてみましょう。その5社から、ABM型コンテンツ戦略を始められます。
参考情報
Salesforce「ABMとは?アカウントベースドマーケティングの手法・導入手順・おすすめツール」
https://www.salesforce.com/jp/marketing/abm/
Salesforce「Account-Based Marketing (ABM)」
https://www.salesforce.com/marketing/account-based-marketing-guide/
Salesforce Trailhead「アカウントベースのマーケティングを使用して需要を創出する」
https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/account-based-marketing-quick-look/use-account-based-marketing-to-generate-demand
HubSpot「HubSpotでアカウントベースのマーケティングをセットアップする」
https://knowledge.hubspot.com/ja/branding/get-started-with-account-based-marketing-in-hubspot
LinkedIn Marketing Solutions「Company Targeting」
https://business.linkedin.com/advertise/ads/targeting/company-targeting
LinkedIn Marketing Solutions「Matched Audiences」
https://business.linkedin.com/advertise/ads/targeting/matched-audiences
Higgsfield「How to Use Marketing Studio for Ads」
https://higgsfield.ai/creator-hub/help-center/tools/how-do-i-use-marketing-studio-to-create-video-ads
ElevenLabs「Text to Speech」
https://elevenlabs.io/docs/overview/capabilities/text-to-speech
※企業・担当者情報をABMへ利用する際は、情報の取得元、利用目的、自社の情報管理方針、各サービスの規約などを確認してください。公開情報から作成した課題仮説は、確認済みの事実と区別して扱うことが重要です。SNS・AIサービスの機能や料金も変更されることがあります。

